第27章 新たな時代の幕開け
「そういえば、出張は?」
「これから戻る」
「こ、これだけのために戻ってきたの?」
「これだけじゃないよ」
そういうと、悟は酒臭い口に口づけした。
唇をついばむようなキスに、思わず息が漏れる。
「…まじぃ」
苦手な酒の残り味に文句を言いながらも、キスをやめることはなかった。
久しぶりのキスに体がうずく。
未だに嫉妬してくれることが、興奮を増進させた。
このままベットにいくのかと心の準備を整えていたが、そんなことはなかった。
「物足りなそうな顔」
口周りを拭う仕草が、とても色っぽくて。
この人が自分のものであると考えると、どうしようもなく叫びたくなる。
もっと、もっと、彼が欲しい。
「…足りないもん」
「可愛いこと言ってもだーめ。僕を嫉妬させた罰」
そういって、悟は再び出かけてしまった。
この火照った体を慰める方法がなくなった今、ヤケ酒に走るのも無理はない。
このせいで、翌日の恵の稽古は延期となった。
恵は私の自己管理を憎んでいたが、間接的に悟に邪魔されたことを伝えたら、一体どんな顔になるのだろうか。
しかし、経緯を説明しろと言われたら困るので、言い訳したくなる気持ちを押さえて、電話越しの怒りを素直に受け止めた。