第27章 新たな時代の幕開け
恵との食事はまあまあ楽しく、お酒も料理もおいしくいただいた。
酔いが回りながらも、何とか家にたどり着き、鍵穴にカギを差し込んだ。
少し違和感を感じながらもいつも通り中に入ると、部屋の電気がついていた。
節電にうるさい私が、電気を消し忘れたとは考えにくい。
残る可能性は2つに1つだが、この場合は泥棒と鉢合わせた方がはるかに楽そうだ。
「おかえり」
一気に酔いがさめ、背筋が凍った。
前にそびえたつ壁に圧倒され、思わず口を押えた。
「こんな時間まで、どこに?」
「なんで…いんの」
「ど・こ・に?」
「…写真、送りませんでしたっけ」
「確認したよ。だから、帰ってきたんじゃん」
悟は携帯を突き付けた。
そこにはビール片手に笑う私と、不機嫌そうに餃子を頬張る恵がいた。
「ぎょ、餃子が美味しくて…」
「そうなんだ」
「今度、一緒に行こ」
「いいよ」
無言の圧にたまらず靴を脱ぎ棄てて洗面所に駆け込んだ。
手を洗いながらも、悟は後ろに張り付いてくる。
悟も堪らなかったのか、私がタオルで手を拭いたのを確認すると、すかさず抱き着いてきた。
「何で惠とご飯行ってんの。お酒も飲んでたし」
「だ、ダメだった?」
「ただでさえ千夏といられないのに、こんなの送られてきたら、妬くに決まってんでしょ」
「ごめん。写真は良かれと思って…」
「まあ、この千夏、めちゃカワだから、ありがたい供給だったけど。それを恵が独占してたと思うと、イラつく」
以前から、何かと恵を意識している悟くん。
子供相手に何ムキになってんだ、といった時には、本当に酷い目にあった。