第27章 新たな時代の幕開け
立派な呪術師がどんな人なのか、そんな人が存在するかも分かっていないくせに、よくここまで偉そうにできるな。
自分で自分に感心した。
とりあえず、恵にはは危機に瀕した大切な人を後回しにする勇気を学んでもらおう。
「じゃあ、帰ろう。何が食べたい?」
「何で一緒に晩飯を食べることになってるんすか」
「高いところじゃなかったら、どこでもいいよ」
「…ほんと、話聞きませんよね。じゃあ、中華で。その代わり、明日稽古つけてください」
「いいよ、明日も悟いないし。でも、なんで君たちは私ばっかり頼るかね」
「他の人は知りませんけど、俺はあの人を頼るのが嫌なだけです」
恵の言葉に、思わず顔をしかめた。
恵の言い草に引いたわけではない。
悟に動きを習ったときのことを思い出したからである。
「お互い苦労してるね」
「…結構似た者同士ですよ」
「私はあそこまで適当じゃない」
「いえ、似てます」
微塵も優しさを感じない言い方には慣れている。
あの手この手で否定しながら様子を伺うと、真顔のまま前を見つめていた。
恵が何を考えているかは何となく分かったので、徐々に声量を落として、恵の背中を叩いて渇を入れる。
「強くなってよ」
「…はい」
悟と恵のつながりは、さっと聞いただけ。
詳しいことは何も知らない。
でも、聞かなくてもなんとなく分かる。
本当のところはどうなのか知らないが、きっと恵に血縁のしがらみを味わせたくなかったのだろうと予想する。
「タクシー呼びますか」
「何言ってんの。走るよ」
「は?」
「ほら、置いてくよー」
だから、私は恵の頼みは断らないことにしている。
早く強くなってもらいたい故だ。
だから、悟に怒られても…。