第27章 新たな時代の幕開け
恵と出会ったのは、私が隠遁生活を送っていた頃だ。
悟とコンタクトをとるにあたって、電子機器を使うのは怖かったので、アナログな方法をとった。
元々、とある情報源から、悟が恵を論点に禪院家と争ったことと、恵が呪術師として悟の世話になっていることを知っていた。
そのため、私と面識がなく、悟と関わりのある人物として適性のある、恵を利用した。
『やっほ。喧嘩好きなの?』
『誰っすか』
目つきの悪い少年を見つけるのは簡単だった。
しかし、恵は全く了承してくれなかった。
『嫌です。見るからに怪しいですし』
『そう。お礼はするよ』
『お礼なんか…』
『お姉さんを治すって言っても?』
『…何者ですか』
『田辺ゴン太』
そうして、箱の配達と引き換えに、私は恵のお姉さんを診ることになった。
正直、本気で津美紀さんを診るつもりはなかった。
これから混乱が起きることは分かっていたし、それに乗じて逃げる計画だった。
もし、万が一、診ることになっても、千春と仲直りすれば、どうにかなると軽く考えていた。
しかし、計画は思うように進み、恵は私のことを忘れていなかった。
そのため、ありとあらゆる本を読み、硝子にアドバイスを聞き、由基さんにも話を聞きに行った。
(こりゃ、ダメだ)
恵には悪いけれど、あらゆる医者や、あの硝子ですら手をあげている問題を、私が解決できるわけがない。
初めから分かっていた結果だが、申し訳なさそうな顔をして、恵に伝えた。
自分が悪い大人であることは自覚している。
「そうですか」
「ごめんね」
「いえ」
けれど、ここで終わらせる気は毛頭ない。
「津美紀さんって誰かに恨まれるタイプ?」
「違います」
「そしたら、津美紀さんが一人で襲われた可能性って低いよね。無差別に選ばれる可能性は言わずもがな…」
「まあ、そうですけど…」
「それに、呪いの元を叩けば、目が覚めると思うんだ。私が作った呪札も私が死ねば消えるから」
津美紀さんの顔に布を被せて振り返ると、恵は目を丸くしていた。
「じゃあ…」
「そう。でも、恵は関わらないで」
「何でですか」
「足手まとい」
「っ…」
「今は立派な呪術師になることを目指してください」