第26章 三度目のクリスマスプレゼント
ば、か。
あ、ほ。
なんで────
と、続く言葉が出てくる前に言葉を黒く塗りつぶした。
「貸して」
今度は悟が書く。
…なかなか描き始めなかったけど。
「ふっ……硝子〜、それはないよ」
「何書いてもいいでしょ」
傑の腹には硝子の欲しいものがびっしりと。
一番最初に書かれた言葉が睡眠なのは、どうかと思うけれど。
「あ、硝子」
「ん?」
「傑からの伝言」
「…。なんて?」
「あの時はすまなかった、だって」
傑の言い様からそんなに重い話じゃないと思ったから、「何かあったの?」なんて聞こうと思っていたけれど、硝子の顔は一気に固くなって、何かを聞ける雰囲気ではなくなった。
でも、空気を読めないクズがここにいる。
「何を謝られたの?」
バシッと悟の脇目掛けて拳をだす。。
けれど、当たることは無かった。
「…別に」
「な〜んかやらしいね〜」
「1回黙ってろ」
悟の口を塞げば、彼が持っていたペンが私の頬を掠める。
当然、キャップはついていなかった。
「…覚えとけよ」
「あー怖い怖い!硝子〜たすけ…「嫌」
何だかんだふざけていると、後ろで学長が笑いを漏らす。
「何笑ってんだよ」
「何笑ってんの」
「何笑ってるんすか」
似たようなことを揃って言えば、更に学長は笑う。
「あ、学長の出世願ってやるか」
「おいおい、傑の体は短冊か?」
「メリークリスマスって感じね」
硝子がペンを渡してきたから、私も追加で何かを書こうとした。
さっきの七夕みたいな会話を思い出して微笑みながらペン先を置いたときだった。
また涙がこぼれた。
だけど、気付かないふりをして書き続ける。
傑の体に落ちた涙を拭いても、油性ペンだから文字が滲むことは無い。
な、ん、で。
また先程と同じことを書いてしまった。
「…私達が、笑わせてあげたのに」
心から笑えないのなら、傑が笑うまで何度も笑わせようとしたのに。
そういうことじゃないことはわかってる。
でも、…傑が死ぬ未来よりマシだったと思う。