第26章 三度目のクリスマスプレゼント
連れてこられた部屋は、私が大嫌いな部屋。
だって、誰かが死んだらここに連れてこられるんだもん。
この扉を開けたら向こうにいる。
見た目以上に重そうな扉。
「…入らないのか?」
学長の言葉で我に返り、慌ててドアの取っ手に手をかけた。
けれど、動かせなかった。
今までの
楽しい記憶が、全部
全部
頭に流れてくる。
「千夏」
学長がグラサンを取って笑った。
「顔に落書きしてやるかっ」
お前達よくやってたろ、と懐かしむように付け加えて。
「ペンならある。行ってこい」
太いのと細いのがついた油性ペンを渡され、背中を1度叩かれた。
(…懐かし)
袖で涙を拭って、ドアを勢いよく開ける。
もちろん、込み上げてくる笑顔を前面に出して。
「お」「…」「え?」
誰もいないと思っていたのに、先着が2名。
「千夏も来たの?」
「先生に…」
「学長ね」
「学長に…呼ばれて」
2人の顔を見たらなんだか気が抜けてしまって。
ペンを落として拾い、もう一度落としてしまって、また拾った。
「2人もせ…学長に呼ばれた?」
お互い譲り合うように顔見合せて、控えめに硝子が頷いた。
「そのペンは?」
「ああ……顔に落書きしようって、思って」
2人の陰に隠れていた遺体が見えた。
鼻の奥がツンとなる。
「それ最高。やろう」
「…お前、これ好きだよな」
硝子は自分の胸に油性ペンがあるので、一足先に体に黒を塗った。
震える足で近づくと、傑がいた。
最後に見たまんまの姿で。
(…なんて書こう)
昔はあんなにスラスラかけていたのに、こんなことに悩む日が来るなんて。
「先に書く?」
「いや、どうぞ」
悟の手が私の脇腹に添えられる。
1度深呼吸してみた。