第26章 三度目のクリスマスプレゼント
傑を殺そうと決めていたのに、いざ目の前にしたら揺らいでしまったのは何故なのか。
私はみんなを守ると決めたのに、千春との喧嘩に時間を使ってしまった。
あの時間、動けていたら誰かを救えたかもしれないのに。
もし、コンブがいたら慰めてくれるのに。
一緒に悲しんでくれたのに。
こんな自分を忌み嫌う自分が言う。
「ウジウジしてウザイんだよ!」と。
こんな自分、捨ててしまいたい。
「お待たせしました。あなたはどこを怪我してます?」
聞き覚えのない声に顔を上げる。
知らない人だった。
「あ…大丈夫、です…ごめんなさい」
端で小さくなっているから、私もけが人だと思われたのだろう。
ゆっくり立ち上がって、少しだけ頭を下げた。
「怪我がないなら良かったです。所属はどこですか?」
所属…。
そんなものは知らない。
私が返答に困っていると、遠くから私の名を呼ぶ声がした。
「千夏!」
これをいいことに、適当に言い訳しながらそちらへ向かった。
「何してんの。上に呼び出されてなかった?」
「もう行ってきたよ」
硝子は一切手と足を止めることなく動き続ける。
「な、なにか手伝えないかなって…」
この状況で、硝子とお話したくて、なんて言えないから、嘘を取り繕う。
「何か?えぇ…そうだな、適当にあっちから…」
「私!反転術式、使えるよ…!」
硝子の活動が止まる。
「硝子みたいに早く出来ないけど、使えるよ」
だから、ここにいさせて。
今、私を1人にしないで。
「……じゃあ、あっちの方をお願い。軽傷だけど術式使いたい人だらけだから」
「分かった」
硝子みたいに白衣を着たいけれど、ただの見栄なので口には出さない。
善は急げ。
走り出そうとした時、肩を叩かれた。
「凄いじゃん」
「…」
突然褒められたから、びっくりしちゃって。
お礼を言おうとしたときには、既に硝子は指示を出し初めてしまった。