第26章 三度目のクリスマスプレゼント
なぁ、マリカーやらねぇ?
過去にも同じ言葉を聞いたことがある。
昔と違うのは、彼が上裸であることくらいだ。
年齢はもちろん、仕事も、立場も、精神状態も。
10年前の自分とはほとんど変わってしまった私達だが、返答だけは変わっていなかった。
いいよ。
ぶちのめしてやる、と。
けれど、そういうゲームじゃないと突っ込んでくれる人はもういない。
うわ、バナナ。
赤甲羅とか最悪。
青甲羅の方が酷い。
クリボーに当たったんだけど。
感想も昔と何も変わっていない。
相変わらずトップを走る彼と、彼をトップから引きずり下ろそうと協力し合う私達。
不意をついてトップに躍り出る人は、まだ来ない。
「ちょ、硝子さん。何遊んでるんですか」
ノックなしに入ってきた第三者の声で指が緩み、結果は3位に終わる。
そして、現実に戻ってきてしまった。
彼女は仕事が残っていると怒られ、連れ出されてしまった。
隣に座る彼は溜息をつき、ゲームを片し始めた。
そして、私も。
彼の温もりが消えない内に、シャワーを浴びることにした。
カーテンで仕切られた簡易的なシャワー室。
使用しているのは私だけだからと、シャワーに紛れて少しだけ泣いた。
シャワーを浴び終えて部屋に戻ると、彼は先生に戻っていた。
ずるい。
私はまだ戻れてないのに。
そんな目で見ていると、彼はキスをしてきた。
なんの意味もない口付け。
愛も甘さも何も無い。
あるのは物足りなさだけ。
生徒のところに行くと言って出ていった彼。
残された私は何をするべきなのか。
そんな疑問に答えるように、私が建物から出ると懐かしい顔ぶれが出迎えてくれた。
少し年老いているが、憎たらしい顔つきは変わっていない。
反抗する意思がないことを伝え、私はその人達について行った。