第26章 三度目のクリスマスプレゼント
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「んじゃ、とりあえず硝子さんの所に行くか」
「憂太、ほら立て」
「う、うん」
片腕が無くなったパンダが、憂太の背中を叩いた。
前を歩く3人と1匹の後ろをついて歩く。
10歩ほど歩いただろうか。
突然憂太が立ち止まった。
「五条先生!」
「んー?」
「そういえば、千夏さんが…」
憂太の視線が、血溜まりに移る。
鮮明な赤ではなく、既に乾いてどす黒くなっているが、事の甚大さは十分に伝わる量と色だった。
憂太の視線と、先程一瞬だけ顔を合わせた千夏の姿と重ねると、きっとこれは千夏のものなのだろう。
「心配いらないよ。多分、大丈夫だから」
「今、どこにいるか知ってますか…!?」
「なになに。そんなに千夏に会いたいわ…け」
筋肉が痙攣した。
生徒達も同方向にただならぬ気配を感じたようで、一同口をあんぐりとさせていた。
それを煽るかのように、激しい音が鳴り、地が震えた。
「地震か?」
「…明太子」
「この気配…何か嫌だな」
聞こえてくる言葉を流しながら、僕は小さくため息をついた。
大凡の予想は立っている。
嬉しいような、少し面倒臭い、そんな感じの予想。
「ごめーん。皆、先行ってて」
「どこ行くんすか」
「じゃーね」
一体、アイツは何をしたのだろうか。
千春と喧嘩したと聞いていたけれど、この呪力量は千夏単体のものではない。
…まさか、千夏はまだ成長しているのか?
異様な雰囲気に導かれるまま移動すると、案の定千夏の後ろ姿があった。
そして、その周りのものはことごとく粉々になり、周囲には焦げ臭い匂いが立ち込めていた。
「千夏」
余程集中していたのか、声をかけると千夏は少し跳ねて、小さく声を上げた。
口元を押えて、お化けでも見たような顔。
「さと、る…!」
気がついたように僕の方へ駆けてきて、肋が折れそうなほど強く抱きしめられた。