第26章 三度目のクリスマスプレゼント
乙骨君と話して、少し気が和らいだ。
後でプレゼントを用意して、盛大に感謝しよう。
私は強くない。
でも、弱いわけではない。
傑と向き合う覚悟だけは失う訳にはいかない。
傑は相当の重傷を負ったのか、残穢を消すどころか、血痕があとを引いている。
それを頼りに歩みを進めると、方向音痴には手厳しい入り組んだ場所に辿り着いた。
これからここを探すのか、と少し絶望を感じたところ。
「やっと来たな…」
傑が出迎えてくれた。
予想通り、致命傷を抱えて。
「随分やられたね」
「…否定しないよ」
壁を伝いながら歩く傑の後ろをついて歩く。
「この間みたいに助けてくれないか?」
「いーや」
「…相変わらず、ケチ、だな」
「そうだ。千春に術式返してもらった」
「気づいて、たよ……あぁ、千春も来たのか」
千春は石畳の地面から姿を現し、人型の状態で私の横に留まった。
けれど、すぐに元の状態に戻り、私の背中に抱きついてきた。
「私も調べて見たよ」
『…』
「…千春、聞かせてくれ。お前は私の何だ?」
『…従妹』
「やはり、そうか。術師だったのか?」
『…そうだ』
千春が他人と話すなんて、悟以外で初めてだ。
悟の時でさえ、とても警戒していたというのに。
その時と今の私の状況が変わったからなのか、相手が傑だからなのか。
「はっ…。それなら、最初から千夏を殺せば良かったな…」
『それはさせない』
「冗談、だ。千春が手強いのは知ってるさ」
ガクンと傑が膝を折った。
私が手を差し伸べるより先に千春が動き、傑の周りに集った。
『死ぬのか』
「それは運…いや、必然だろう。アイツがいる」
絶対的信頼。
私はやっぱり傑を信じていたい。
こんなことになっても、まだ希望を捨てられない。
「助けてくれるのか?」
『…できない』
「そうだろうな…」
傑に手を招かれやっと近づくと、上から手を貸せと言われた。
釣られて肩を貸してあげたが、隣で苦しそうに歩く傑を見て、自分は何をやっているのだろうと、甚だ疑問に思えて仕方ない。