第25章 長引く姉妹喧嘩
あんなに可愛らしい姿をしていたパンダが皮を剥いで、凶暴な様を剥き出しにしている。
「やるね」
「傑…!」
「何。すぐに戻る。そこを動くなよ」
傑は呪霊に私の足を喰わせ、私の自由を奪った。
不思議なことに痛くも痒くもない。
「パンダ!ダメ!」
知り合いが、知り合いに殺意を向けている。
「よそ見」
そして、守りたい対象が傷ついていく。
「ねぇ、千春…。これを見ても、傑の肩を持つの?」
返事はない。
パンダが蹴られて、棘の喉が潰れても、なんとも思わないの?
それでも、私より傑を優先するの?
「千夏!何やってんだ!」
「無理。動けない」
千秋と千冬を呼んでもいい。
でも、2人が呪力を使うと、2人は跡形もなく消えてしまう。
2人は呪力の自己補完が出来ないのだ。
「素晴らしい!!素晴らしいよ!!!」
傑が天を見上げ、叫ぶ。
「私は今!!猛烈に感動している!!」
傑は危険だ。
危険すぎる。
私は1枚の紙を取り出して、破った。
来い、乙骨憂太。
「私の望む世界が、今目の前にある!!」
私は片足を切った。
痛い。
今にも叫び出しそうだ。
「おいおい。ここに来て自殺はないだろ。感動に水を差すな」
「自殺は、しないよ。そう約束したんだ」
傑は涙を拭うと、呪霊の塊をパンダと棘に向けて放った。
きっと、2人は耐えられず足を折るだろう。
だから、その前に私は自分の腹に刀を刺した。
何度も、何度も、血が飛びちろうと、頭が割れそうになっても、刺した。
死なないのが不思議なくらいだ。