第25章 長引く姉妹喧嘩
「君がいたか」
「いちゃ悪いかよ。てめぇこそ、なんでここにいる」
「悪いが、猿と話す時間はない」
不覚。
読み間違えた。
私が傑と鉢合わせるよりも先に、真希が鉢合わせるとは。
こんなことなら、後先考えずに窓から飛び降りて、最短経路で来るんだった。
そんな後悔を微量抱きながら、2人を屋根の上から傍観した。
これはどう見ても、真希の命が危ない。
傑が非術者である真希に手加減するとは思えないし、真希が傑より強いとも思えない。
「…コンブ、やるよ」
「…今まで、ありがとう」
「本当にありがとう」
コソッとコンブに声をかけ、コンブを離脱させた。
コンブが屋根のてっぺんにたどり着いたのを確認してから、呪力制限を解除した。
「…!」
「…なるほど、君もいるのか」
私がいることを知ったからか、傑は呪霊を一気に真希に飛びつかせた。
これを見て見ぬふりはできない。
中身を取りだしたカバンを投げ捨て、真希の背後に飛び降り、群がる呪霊を2体殺した。
「真希、大丈…」
「千夏の相手はこっちだ」
「っ…!」
傑に腹を蹴られ、飛ばされた。
すぐに体を起こしたものの、再び真希の元に助太刀に入るのは厳しそうだ。
「あれ、真希のレベルじゃ倒せないっしょ」
「そりゃあ、時間をかけてられないからね。殺すならサッとやらないと」
「確かに。それなら、救うのもサッとやらないと」
先程除霊した際に、全ての呪霊に触れておいて正解だった。
周りには下見の際に作った仕掛けが沢山ある。
それらが揃って呪霊の体を裂き、真希を救った。
けれど、真希は既に重傷を負っていて、立ち上がれそうになかった。
「残念」
「大丈夫」
本当は大丈夫なんて言える状況ではなく、すぐに治療したいところ。
傑を相手にしながら、何とか真希に近づきたいが、今のこいつはそんな優しい男ではない。