第24章 熱血サンタクロース
部屋を出てから5分。
既に迷子気味だった。
「あれぇ…、寮ってこっちじゃなかったっけ」
「校舎にいるなら、先に教室行けば?」
「それだ!頭いいね」
圧迫感があると不満を口にしたコンブは、狭いポーチから脱出して私の頭に移動した。
「そろそろ聞かせてよ。何で計画変更したの」
「悟に嫌われたくなかったんだよ」
私は傑を殺そうとした。
何故なら、夢のために悟の大切なものを傷つけようとしているから。
傑と悟が隣に立って笑う未来を作ることに限界を感じたから。
けれど、悟は自分で傑を殺すと言った。
何故なら、傑は悟の親友だから。
親友だから殺さない、のではなく、親友だから殺す。
どちらの方が残酷かどうかは一目瞭然。
「悟がそっちを選ぶことは分かってたんだけど、コロッと堕ちちゃった」
「…ったく。五条悟が絡んだ途端、乙女になるの止めてよね」
「ははっ。気を付けるよ」
昔からそうだ。
あの目を前にすると、思考が止まる。
全部どうでも良くなる。
悟が幸せならいい。
どんなに不幸に思えても、どんなにプランを練っていても、悟が望む選択を信じる。
「…って、ここどこ?」
「もう五条悟に電話したら?」
コンブのアドバイスに従って、電話をかけた。
『もしもーし。憂太と真希に会えた?』
「会えるどころか、今自分がどこにいるか分からない」
『方向音痴、酷くなってない?』
「助けて」
『そう言われても、僕達もう車乗ってるし…。今何階にいるの?』
自分の居場所を分かる限り伝えて、私を遠隔操作してもらう。
校内には人1人いないため、ストレスフリーだった。
『ねぇ。僕が言ってる通り動いてる?』
「もちろん、もちろん」
『僕の頭の中では、既に教室に着いてるんだけど』
「そんなこと…あっ、発見!」
喜びのあまり、ドアを勢いよく開けてしまい、中にいた男女に変な目で見られた。
「本当にありがとう!」
『どういたしましてー。僕も丁度着いたから切るね』
「うん。私も後で向かう」
『ばいばーい』
電話を切って、しばらく余韻に浸りたかった。
けれど、教室は目的としていた人物が揃っていた。