第24章 熱血サンタクロース
「いくら」
「それはそうなんだけどなぁ」
「え、棘が何言ってるか分かるの?」
「まぁな」
棘がおにぎりの具のみの語彙であることは知っていたが、こんなに簡単に伝わってしまうものなのか。
私は全く理解できない。
「何て言ってたの?」
「こんな奴に助けられるほど弱くないって」
「おかか!」
今の棘の言葉は分かったような気がする。
”そんなこと言ってない!”と…。
少し落ち着きを取り戻して、棘の肩に手を置いた。
何から言おうか迷っていると、先にパンダが口を開いた。
「あ、ちなみに千夏は特級呪術師だぞ」
「…!?!?!?」
パンダの一言の後の目の見開き様に、思わず大笑い。
身近に乙骨君という特級呪術師がいるから、そこまで大それた反応をされるとは思っていなかった。
「まぁ、昔ほどの力はないし、呪言使えないけど、守ってやるから」
「…不安だな」
「…シャケ」
「失礼な。弱くなったと言っても、パンダよりも、棘よりも強い自信はあるよ。なにせ、経験値が違うから」
素早く2人の背後に回って、肩に腕を回した。
急いで振り向く2人に、余裕の笑みをプレゼント。
「そんなとこで。私はまだ回るところがあるので、ここで失礼したいと思います」
パンダと棘は学長と悟と一緒に新宿方面へ向かう予定。
コンブを再び手中に収め、悟に投げキッスをした。
チラッと学長を見れば、感情が右往左往している顔をしていて、少し面白かった。
「結局千夏はどこで張るの?」
「残りの1年に挨拶してから決めるつもり。お楽しみってことで」
コンブの様子を見る限り、学長に計画変更は伝わっているだろう。
いつも通りコンブをポーチに入れて、大きく伸びをした。
「パンダ、残りの1年はどこに?」
「寮。いなかったら…教室とか?」
最後に全員に手を振ってから、部屋を出た。
もう少し特有の挨拶をした方が良かったかもしれないが、そうやってブラフを立てたくない。
下校時刻に”またね”というように、また会えることを不思議に思わないような心持ちでいなくては。
「また後で」
「ああ、また後で」