第24章 熱血サンタクロース
存在がバレていいことが、こんなにも楽なんて。
数年ぶりに許された自由行動に、少し感動を覚えた。
いくら2年間在籍していたとは言え、高専内の構造に詳しいと胸を張ることはできない。
記憶に自信を持たせるために、下見を行うことにした。
「ここの建物、新しくなってる!」
「そうそう。僕が壊しちゃったから」
「うわ、破壊神…」
「経年劣化で建て直す計画あったし、そんなに僕に非はない」
こうして悟の隣を歩くと、あの頃に戻ったみたい。
腕を組んだり、手を繋いだりしたら、デートにカウントされるだろうか。
なんて、悟と会う度に、並んで歩く度に、そんなことを考えていたあの頃みたい。
「あ、こんちわー」
「どうも。こんな事態なのに相変わらずで。隣の方は?」
「見学〜」
「…こんな時に?」
「あはは。じゃーね」
スーツに身を包んだ男の人に、軽く頭を下げ足早に横を通り過ぎた。
そして、悟にくっついて即移動。
「ちょっと。誰もいないって言ったのはどの口だ」
「いやぁ。まさか、まだ人が残ってるとは」
「真剣に!」
「別にバレてもいいでしょ。今バレるか、数時間後にバレるかの違いなんだから」
こんな会話を数回繰り返しながら、なんとか下見を終えた。
次の場所に移動する前に、学長に会いたいとオネダリをすると、少し拗ねながらも受け入れてくれた。
「あっ、おしり触ったでしょ」
「当たっちゃった♪」
「最低」
「そんなぁ。心は広く持とうよ」
油断も隙もない。
悟に睨みを聞かせていると、横から気だるげな声が飛んできた。
「惚気なら他でやってくれ」
「がくちょー!」
ぴょんと悟を突き飛ばして、学長に飛びついた。
「ちょっと。彼氏の前で何してんの」
「学長だし」
「ダメ」
「…お前らは何がしたいんだよ」
悟に腕を引っ張られてホールドオン。
学長に呆れられたが、私は幸せだった。
意味もないハグがとっても嬉しい。