第23章 口走る本音
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「早速で悪いけど、話を急ぐよ」
元教え子、元上層部の悩みの種…etc。
体を表す名がいくつもある女、八乙女千夏との再会を経て。
窓ガラスの修理に想いを馳せていたとき。
彼女の置き土産である呪骸、コンブちゃんが偉そうに俺の肩を行ったり来たり。
彼女は『私にはそれが限界だった』と言っていたが、呪骸に心を持たせる時点で、並みの呪術師ではない。
「先に部屋の掃除をしても?」
「えー…いいよ」
どことなく彼女に似ているコンブは、自分は傷つかないからとガラス集めに協力してくれた。
あらかた部屋の整理ができ、割れた窓にも手を施し終わった。
そのことを確認すると、コンブは先ほどと同じことを言い、八乙女千夏の過去を語りだした。
彼女の過去は1時間に凝縮されても、まだまだうわべのみの話で、2時間話を聞いた俺は、結構すごいのではないかと思う。
(注:決して暇なわけではない)
「学長、聞いてる?」
「ああ、もちろん」
腰は痛くなったが、話を聞いていて退屈はしない。
コンブの話法が上手いのと、単純に彼女の過去が面白い。
そして、彼女の過去をあらかた知ったころ、コンブは第2部と言って新たな話を展開した。
「過去話には飽きただろうから、ここからはQの計画について話そうと思う」
「計画?」
「結論から言うとね」
コンブが言った言葉は、感動の再会をもみ消すように作られたもので。
一瞬頭が真っ白になり、何も考えられなくなった。
「Qは死ぬつもりだよ」
「……は?」
反応を示しただけ褒めてほしい。
けれど、コンブはそんな声掛けをすることもなく、どんどん話を進めていった。
「私はQの言うことを聞くために生まれた。だから、この計画を学長に話す時点でアウト。それでも話すよ」
傀儡呪術学を知る人ならばわかる。
コンブは”本気”で千夏の計画を邪魔するつもりだ。