第23章 口走る本音
だから、今も必死に何かを隠そうとしている千夏を見て、愛おしいと思った。
千夏の秘密は誰かを守るためにあって、今こうして泣くのを我慢していることで誰かが救われているのだと思うから。
そして何より、秘密を抱えている千夏自身が、秘密を抱えてることに関して罪悪感を持っている。
解放してしまえば楽になるのに、千夏はしない。
自分にとって何のメリットもないことに、千夏は手を出して、勝手に傷ついている。
こんな矛盾を抱えている女を、誰が好きになれるか。
他の人にとっての嫌悪要素が、千夏の矛盾したところが、僕は好き。
だから、どうしても千夏を嫌いになれない。
千夏が自分を捨てる生き方をしない限り、嫌いになれない。
だから、千夏が友達を殺そうとしたり、学長の信頼を裏切ったりして、千夏が自分の一部を捨てたことに憤りを隠せない。
しかし、その捨てた一部が代償に見合った何かを守っているなら、百歩譲って納得できる。
けれど本心では、僕の好きな千夏は保ったままで、捨てようとした部分を僕が代わりに捨てることが望ましい。
千夏が千夏であるために、僕は努力してきたのだから。
今回に関しても、どんなに不可能だとしても、僕の理想を守るために、僕が介入すべきだった。
学長に手紙を届け、千夏の”親切心”にお礼を言って、僕はベットを使わせてもらった。
この家は元々寝るためだけの部屋だったから、荷物がほとんどない。
今度買い出しに行き、ベットもダブルにしないと……等と考えている内に、やや浅い眠りについた。
目が覚めると、まだ朝ではなく、長い夜の中間地点だった。
目が覚めた原因は覚えのない衝撃。
千夏が僕の体にまたがっていた。