第22章 一握の優しさ
でも、まずはこれから。
「どうして傑が千夏のことを知ってる」
「会いに行ったから」
「いつ」
「悟が傑の残穢を確認した日」
あの日は歌姫に会いに行ったのではないのか。
千夏は一言もそんな風に言っていなかったけれど、この時僕は勘違いをして、嘘をつかれたと思い込んでいた。
「何で」
「千春のことで確認したいことがあった」
「傑が関係あるとは思えないんだけど」
「傑に関係があるから、会いに行ったの」
くそったれが…!
「全部…!話せ…!」
一体何を考えているんだ。
いくら千夏だとしても、許せることと許せないことがある。
「話す。ちゃんと話す」
「嘘つくなよ」
「うん」
落ち着くために冷蔵庫を覗き、飲み物を取った。
千夏に飲むかどうか聞いたが、いらないと言われので、茶色のパッケージの方は冷蔵庫に戻した。
「悪い。カッとなりすぎた」
「別にいい。怒られるくらいで済むなら、ありがたいくらいだから」
千夏は順序立てて説明してくれた。
千春が最後に頼み事をしたこと。
その頼み事を遂行するために、ずっと傑のことを探っていたこと。
情報の取引のために、高専の情報の一部を流したこと。
傑を殺そうとして、返り討ちにあった、と。
「高専の情報を渡したって…、どうやって?」
「言ったでしょ。コンブは情報探しが得意なの」
コンブはずっと千夏とグル。
だから、情報が気持ちよく集まる学長にベッタリとくっついていたってわけか。
千夏はまぁまぁヤバいことをした。
千夏自身も分かっていると思う。
だとしても…。