第22章 一握の優しさ
学長室に向かうと、学長は険しい顔をしてパソコンを眺めていた。
僕の目当てであるコンブちゃんは、一人でおままごとをしていた。
「ダメよ、そのお金は今月の家賃…キャ!…『うるせぇ、俺の金だ!』」
なんて場面を演じているんだか。
もう少し可愛らしいおままごとをしてほしいものだ。
「コンブちゃん、コンブちゃん」
「なーに」
コンブサイズのおままごとセットは実に可愛らしい。
小さなティーカップを持ったコンブが、こちらを向いてくれた。
「手伝ってほしいことがあるんだけど」
「…やだ。Qの言うことしか聞かないもん」
「そのQの頼みでもあるんだよ」
「嘘つけ」
学長によると、自分を迎えに来ないQに対しての怒りが根本にあるため、今のコンブはQの言うことでも聞かない可能性があるらしい。
「信じてよ」
「信じてもいいけど、面倒臭そうだからやらない」
「怒られてもいいの?」
「どーせ、私のことなんか忘れてるもん」
呪骸がすねている…!
千夏のいい加減なところに困らされているのは、人間だけではないみたいだ。
「僕もQに放っておかれてるから、その気持ちわかるよ」
「え、お前もか」
「自分勝手に行動するから、もう大変で…」
「だよな!その気持ち、よーく分かる」
少し話は盛らせてもらったが、日ごろの罰だ。
コンブから漏れ出す愚痴は数年物で、留まることを知らない。
よくここまで溜めたな、と少し感心した。
「よーし、黒マスク白髪ガイ君の頼みなら聞いてやる。同じ苦しみを味わっている仲だ!」
この意気投合の仕方は、果たして良いものなのか。
千夏に知られたら殺されるかもしれないと思いながら、調べてほしいことを伝えた。
すると、少し苦い顔をされたが、しぶしぶ了承してくれ、コンブは学長のパソコンの前に移動して、無理やり使用権を剥奪した。