第22章 一握の優しさ
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『悪い、帰れなくなった』
そうメッセージを送ると、数時間後に『了解ー!』という淡白な返信があった。
(もう少し、何かあっても良くないか?)
仮にも感動の再会から2日目だ。
しかも、恋人同士になってから24時間もたっていない。
恋仲である八乙女千夏からの連絡に不満を抱きながら、携帯をしまった。
「どうする。ここに留まるか」
「その予定。いつ来てもおかしくない」
学長の肩には可愛らしいマスコットが。
聞くところによると、千夏の呪骸だとか。
以前、電話越しに話したのは、こいつだったらしい。
自分でそう言ってきた。
今日、とある場所で傑の呪力の残穢を確認。
息をひそめていると思ったら、突然出てきた。
昔からパフォーマンスやらに段取りを求める奴だったくせに。
しかも、その現場には憂太がいた。
ややこしいことにしないでもらいたい。
この一件を理由に、この日は学校に泊まった。
家に帰ったのは、次の日の昼間だった。
帰ったと言っても、数分滞在しただけ。
千夏の様子を確認しようと思ったのだが、部屋にいなかった。
昼間だし、どこか出かけてるのかと思ったが、同日の夜にもう一度戻っても、千夏はいなかった。
束縛男と思われることを覚悟して、千夏に電話をかけた。
出ない。
(…怒っちゃうよー)
本気の怒りを感じながら、もう一度電話をかけると、ワンコールで出た。
『ごめん。お風呂入ってた』
電話に出ない理由が『逃亡』でなくて安心したものの、その理由も理由でツッコミどころが満載。
「どこで」
『え?ホテルだけど』
千夏の頭がおかしいのは知っている。
けれど、ここまでとぼけられると、流石に心配になる。
「今どこいるの」
『今は京都。本当は旅館が良かったんだけど、お金なくて』
「何で…京都に…」
『用事のついで。歌姫に会おうとしたけど、厳しそうだったからやめた』
それなら、事前に言ってくれれば、アポを取ったのに。
危険なことはしないでもらいたい。