第22章 一握の優しさ
「…最低」
かの日の悟のように、彼女も呪力でカバーしたかと思ったが、顔に浮かぶ汗と表情から普通にやられていることは、見て分かる。
「一体何を企んでる」
「べ、別に?」
彼女は今にも死にそうだ。
けれど、彼女はタフであり、簡単に死ぬような女ではない。
その点に関しては、信頼を寄せている。
「辛そうだね。トドメを刺そうか」
「はは…」
彼女は震える手で指を鳴らした。
すると、自分の腹部に小刀が刺さっていることに気がついた。
「っ…!」
「これで、あの日の仕返しは出来た」
ジワジワと服を汚す血液。
小刀の柄には気味の悪い紙が貼ってあり、彼女の仕業であることを示していた。
「夏油様!」
「動くな。皆、動いたらダメだ」
隣で彼女が笑っている。
このような仕掛けが、いつ、どこから、どのくらい、やってくるのか予想ができない。
「傑に、まだ、仲間を思いやる、気持ちがある、とはねぇ」
彼女は私の腹から、強引に小刀を引っ張った。