第3章 共通認識
ご存知の通り、竹下通りにはたくさんのクレープ屋がある。
その中でも、私のお気に入りのお店があって、今回はそこのクレープを五条に教えてあげることにした。
五条はもう食べないと言っているけれど、きっとクレープを前にしたら簡単に購入すると思う。
「五条はさっき何食べてたの?」
「いちごスペシャルと、バナナチョコレートと、キャラメルアイス」
想像するだけで口の中が甘くなる。
そして、胃の中も少し反応する。
「やっべ、食べたくなってきたー」
「奢ってあげようか?」
「え、まじ!?」
子犬のような顔になったと思えば、直ぐに眉をひそめて睨んできた。
「何が目的?」
「…そうやって直ぐに疑うのやめろ。ただ、一緒に来てくれたから奢ってあげよーかなーって」
私がそう言っても、五条はずっと疑いの目をかけてきた。
結局、注文の時まで疑ってきたけれど、注文する時は子供のように笑っていた。
メニューの中で1番高いものを頼み、全部のトッピングを追加するなんて。
本当にいい性格をしている。
「こんなゴージャスなクレープ、初めて食べたわー!」
「良かったですね」
上に盛られてる生クリームを口に頬張った。
クレープの1口目は生クリームのみと決めている。
前後左右には人が沢山。
本当は横に立って歩きたいけれど、礼儀良く縦1列になって歩く。
「ん?なんか怒ってる?」
「そんなことないよー、五条が喜んでくれて嬉しいなー!あははー!あっはっは!」
ケチで貧乏性だから、お金を使うことに罪悪感を感じてしまうんだよな…。
そのくせして、他人のクレープに嫉妬するとか。
矛盾にも程があるだろ。
「千夏」
「ん!な……に」
勢いよく振り返ると、五条の手が私の肩の上に乗っていて。
そのまま道端にスライドさせられた。