第21章 紡いだ新たな線
「お、名探偵千夏さん。閃いた?」
シャーロック・ホームズのようにパイプを吸う真似をして、悟の肩を2回叩いた。
「私、明日出かけるね」
「どこに?」
「内緒」
悟の顔から笑顔が消えた。
「言って」
「言わなーい」
「…明日中に帰ってくるんだよね」
「万一の可能性を引き当てなければ」
「万一の可能性って?」
私が戦う可能性!……ダメだ。
私の存在がバレる可能性!……もっとダメ。
私が痛手を負って、帰れない可能性!……監禁される恐れあり。
どれもこれも物騒なものであり、どれも真実であるが故に、回答に困る。
「帰ってくるつもりはあるけど、何かあったら帰れないでしょ?だから、万一の可能性」
「監視つけてもいい?」
「それはキモイからやめて」
つくづく信用されていないと感じる。
信用を失うようなことをやってきたから、別に悲しくはないけれど。
「じゃあ、何用かだけ教えて?」
「千春の供養」
「墓参り?」
「違うけど、そんなとこ」
千春はずっと悩んでいた。
自分の力の本質は一体何なのか。
そして、その本質を知る手がかりを千春から貰っている。
いつ頃行動を起こそうか迷っていたが、悟に呼ばれ、乙骨君と出会い…、波はキている。
この波に乗らずして、いつ乗るというのだろうか。
「…信じるよ」
「ここで裏切ったら、ヤバそうだなぁ…」
「なーに。裏切られても酷いことはしないよ。何かあったら連絡して。すぐ行くから」
あぁ、もう。
好きです。
「そろそろ寝ようか」
「好き」
「突然何?」
「愛が止まらん」
悟に腕引かれ、一緒に布団に潜る。
抱き締めたら我慢できるか分からない、とか言いながら、しっかり私を引き寄せてくる。