第20章 昔話のハッピーエンド
けれど、折角千夏候補と会えたというのに、ここで引き下がるのはもったいない。
もう一度頼み込もうとした。
しかし、千夏は更に続けて言った。
キラキラの目を持った男の子に勇ましく跨り、頭を鷲掴みにしながら…。
「それに、このバカを落としたいんだったら、私を敵に回すことになるよ」
もう一人の男の子と、女の子から笑いが漏れた。
下敷きになった男の子は、驚きながらも照れ笑い。
千夏には見えていないようだが、好きな男にそんな笑い方をされたら、とんでもなくうれしいはずだ。
非常にもったいないことをしていると思い、私もつい笑ってしまった。
「自信満々じゃん。あんた、面白いね」
心菜がいつもの口調で千夏を煽る。
「でしょ。貴方達じゃ私の相手になんないから、帰った帰った!」
しっしっ、と手で払われ、私たちは顔を見合わせて笑った。
自分で言うのもなんだが、私たちはそこそこにモテる容姿をしている。
そんな私たちを虫けら扱いしてくる女なんて、今までいなかった。
そして、たった今目視で確認できた。
この子の背中には小さな青い痣が確かにあったのだ。
「ぷっははは!あんた、ちょっとこっちおいで」
「は、え!?」
千夏の腕を掴んでその場を離れた。
おばさんの子供である可能性があるこの子を、拉致したいという気持ちもあった。
けれど、それより”宝の持ち腐れ”を極めている千夏に、私達3人が貶されたことに不満を抱いていた。
だから、拉致する。
あのキラキラ男子も、千夏に告白されて満更でもなさそうだったし。
きっと両思いだろう。
付き合っているのかもしれない。
それならば、私達のようなクズナンパ野郎を相手にしたらダメだ。
彼には少し痛い目を見てもらわなくては。