第20章 昔話のハッピーエンド
千夏たちがここに戻ってくることは、先ほどの会話から察している。
「そうだ。私たち、まだお昼食べてないんです」
「え、あ、そ、そうなんです~!」
「たくさん出店があって悩んじゃいますよねー」
美香達は私の意図を汲み取ってくれ、ここに残る算段を立てておく。
「君たちかっこいいから、一緒に食べたいな~」
「え~、俺、そんなにかっこいい~?」
「めっちゃかっこいいですぅ!一緒にご飯食べましょうよ~」
自分たちで甘ったるい声を出しているものの、自分たちの声に吐き気が止まらない。
早く戻ってこいと、どこかにいる千夏に懇願した。
その願いが届いたのか、背中に感じていた日差しが遮られた。
「あのぉ。そこ、どいてくれませんか~?」
振り返ると、千夏であろう女の子がたくましく立っていた。
遠くでみたときは小柄という印象だったが、身長はまあまあある方だった。
「さっき向こうにいた子達?」
「そうそう。俺たちの連れ~」
念のため確認を取ると、確かにこの子が千夏。
この子がおばさんの子供であるなら、なんて運がいいのだろう。
「そうなんだ~。私たちも一緒にご飯食べてもいいですか?」
決定打が欲しいところ。
この子たちとお昼を食べて、少し仲良くなったところで聞き出そうと考えた。
しかし。
「ダメで~~す」
千夏はそれを許してくれなかった。
「私達は4人で遊びたいんで。こうやって遊びに行くの、滅多にないんですよ」
まあ、私が千夏の立場だったら、迷わず同じ行動をとっただろう。
得体のしれない女に、時間を奪われて面白いわけがない。
しかも、好きな人との時間を…。