第20章 昔話のハッピーエンド
私の大っ嫌いな種族、『ぶりっ子』に成りすまして、千夏の連れに近づいた。
目当ての男と一緒に居た女の子は、私達が話しかけた途端、どこかに行ってしまった。
「少しお話しませんかぁ?」
「いーですよー」
興味無さそうに返事をした男の子は、何とも美しい見た目をしていた。
日本人離れした顔立ちに、一同顔を見合せた。
「海水浴?」
「そー。クラスメイトとね」
自然に話を聞き出すと、私の知っている千夏と、買い出しに行っているという千夏が同年齢であることが分かった。
これが奇跡というものなのか。
「…悟?」
「おー、傑!見て、ナンパされてんの」
傑と呼ばれた男の子は、悟君とは反対に日本男児。
白いTシャツの袖から覗く腕の筋肉は、とても締まっていた。
「千夏は?」
「まだ買うって言って、突っ走ってった」
傑君は両腕にかけられた沢山のビニール袋を軽く持ち上げて、やれやれといった様子で笑った。
「アイツ、そろそろ豚になるんじゃね?」
「悟。後で千夏に色々怒られると思うぞ」
「ソレハ、コワイナー。傑、助けてよね」
「私は関係ないだろ」
傑君は片腕分のビニール袋を、悟君に渡した。
「千夏ってさっきここいた子?」
「違う。さっきのは硝子っていう冷たい女」
悟君が情けもない形容詞を使ったため、傑君が軽くどついた。
(ナイス、美香!)
この流れで聞いてやる。
私が何年も探してきた女が、彼女であることを確認してやる。
「じゃあ、千夏ってどの子?」
「千夏?えっとね…」
悟君と傑君が合わせて周りを探した。
すると、向こうの屋台付近で私が千夏と予想していた子が、ナンパされていた。
そこには、冷たい女と言われていた硝子ちゃんもいた。