第20章 昔話のハッピーエンド
毎年4回、決まった日に特にひどい発作が出るらしく、その日一日彼女は監視付きで部屋に閉じ込められる。
お手洗いと入浴、食事時のみ、部屋の外に出るのを許されるらしい。
愛華は時間さえあれば叔母の部屋に行くほど、叔母っ子だったのだが、その四日だけは会えず少し寂しい思いをしたらしい。
そのように監禁された次の日に部屋に行くと、決まって叔母は外を眺めていたという。
そして、必ず世話係にケーキとろうそくを準備してほしいと頼む。
その頼みが受理されたことはなかったが、毎年頼んでいた。
そして、愛華が16歳になった年の夏。
彼女が高校に入学し、夜の街に出かけ始めたころだった。
『愛ちゃん。お兄ちゃんたちに心配かけたらダメでしょ』
『おばさんもそういうの?お父さんたちの味方するの?』
何事にも怒りを募らせるような状態の愛華は、叔母の心配を受け入れることなどせず、叔母に怒りをぶつけた。
そして、次第に叔母の部屋と疎遠になった。
そして、父親の我慢が限界に達し、愛華は家を追い出されることとなる。
家を出る2日前、愛華は泣きはらした顔で、無意識的に叔母の部屋に向かった。
叔母の顔は少しやつれていて、表情が減っていた。
けれど、愛華をぎこちない笑顔で迎えたという。
人間性を失いかけている叔母を見て、酷く後悔したとか…。
叔母の話相手は自分の他にいたとは思えないのに、心優しい叔母をほおっておいた自分を何度も責めた、と…。
『私、家を出る』
『…その話、本当だったんだね』
叔母は愛華をやさしく抱擁し、いくつかのアドバイスをくれた。
この家にある金の持ち出し方、外に行ってやるべきことの優先順、いざというときに頼る場所。
叔母も家出を経験しているため、この家の完璧さゆえに苦労した点を、丁寧に教えてくれた。