第20章 昔話のハッピーエンド
「こちらの部屋になります」
「ありがとう、竹原さん」
「では、失礼いたします」
愛華のウインクに反応することなく、継母役の竹原さんは下がった。
「じゃあ、予定通り私が先に入るから」
私の頷きを確認すると、愛華はドアを二回ノックして部屋に入っていった。
心臓が破裂しそうだ。
愛華はともかく、私がここに来た理由は『人助け』。
愛華の頼みをきっかけに、今ここにいる。
五条に別れを告げた日の夜。
私は愛華から頼みごとを受けた。
『あの人を救えるのは、千夏しかいない』
愛華の理解者であった叔母に、是非会ってほしいと言われたのだ。
『おばさんは唯一あの家でまともだった』
どちらかというと、叔母も愛華寄りの境遇で、いい目で見られていなかった。
どうやら、若い頃に家出をしたらしく、それ以来行動を制限され、一人で動くことを禁止されたという。
愛華のように勘当されなかったのは、叔母が兄(愛華の父親)に溺愛されていたから。
叔母は愛華に似て美人で、愛想がよく、いい目で見られていないと言っても、叔母の周りには邪悪な雰囲気を感じなかったという。
捻くれた周りの人とも、いつの間にか仲良くなってしまうのだとか…。
けれど、そんな叔母は精神状態があまり良くなかった。
家出から戻ってきたときをピークに、今まで精神を病んできた。
これは愛華の父親から聞いただけで、愛華自身は叔母が病気であることを感じたことは一度もなかったらしい。