第20章 昔話のハッピーエンド
彼女は、父親の年収数年分となる大金をもって、家を出た。
そして、友達の家を転々として、なんとか高校を卒業。
大学進学を機に東京に引っ越し、本当の意味で家の名から解放されつこととなった。
元々、彼女は金銭面から大学進学を考えていなかった。
しかし、結果的に彼女は大学に進学する。
彼女の背中を押したのは、母親だった。
家を追い出されたとき、彼女は勉強片手に母親を探した。
そして、連絡をとり状況を話すと、自分の元に来いという優しい言葉をもらった。
けれど、彼女は高校を卒業したかった。
最終学歴が高卒だとしても、名のある高校であればそれなりに仕事があるだろうと思っていたのだ。
そして、彼女には夢があった。
本当は大学に行って、勉強し、希望する進路を選びたかった。
そんなことをあきらめ口調で伝えると、母親から大学進学をアシストする声が上がった。
度重なる話し合いの末、彼女は母親の支援を受け大学に進学した。
しかし、彼女の夢が叶うことはなかった。
大学4年の秋。
母親がくも膜下出血で倒れ、一命はとりとめたものの、体が不自由になってしまった。
母親には身寄りがなく、彼女以外に世話をしてくれる人はいない。
施設に入れることも選択肢にはあったが、母親に対する感謝と愛情から、自ら世話することを選んだ。
来年の春からお世話になる場所に断りの連絡を入れ、彼女の母親の地元に戻った。
そして、今に至る。