第20章 昔話のハッピーエンド
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もう何年も前になる。
地元で有名な富豪の長男が結婚したという吉報が、巷を騒がせた。
『少し気が強いものの、良い女を迎えた』と、誰もが結婚を祝福した。
その数年後、その夫婦の間に女の子が生まれた。
男児が望まれていたものの、あまりの愛くるしさに、不満を抱いていた親戚も顔を穏やかにしたそう。
その子はすくすくと成長し、近所のスターとなった。
街を歩けば、おばさん達に挨拶をし、商店街に行けばおじさん達に笑顔を振りまいた。
しかし、集団というものは異物を排除したがる。
金持ちで美女。
しかも、頭も良くて運動神経抜群。
彼女は格好の餌だった。
けれど、彼女は強かった。
成績はトップを維持し、慈善活動に積極的に参加。
そして、意地が悪い人を除くことなく、誰に対しても笑顔を絶やさなかった。
その甲斐あって、小学校を卒業するころには、彼女の悪い噂は一切聞かなくなった。