第20章 昔話のハッピーエンド
「この短刀は?」
「それには私の呪力が込められてる。たとえば…」
手を広げて意識を集中させると、短刀がひとりでに動き、私の手元に戻ってきた。
「自分の呪力を感知して、意のままに動かせるの」
呪力量が多ければ多いほど、見つけやすいし、動かしやすい。
難点は、一度に多くのものを動かせないこと。
それと、遠すぎると何も出来ないこと。
「ふーん」
「……他に、聞きたいことは?」
「ん?別にないよ〜……あっ、憂太がリカちゃんの呪いを貰い受けることって、できたりする?」
気遣ってくれているのか、単に鈍感なだけか。
てっきり、私の術式のことを追及されると思った。
そして、千春の事を聞かれると思っていた。
「できると思うよ。乙骨君がリカちゃんを扱い慣らす必要があるけど」
「なんか卑猥だね」
「…」
「そう思わない?」
「…1人でやってください」
寂しいなー、と五条が笑っている間に、刀を再びバッグに戻した。
そして、ジッパーの音に紛れて、そっとため息をついた。