第20章 昔話のハッピーエンド
「水飲む?」
「うん」
「…コーヒー牛乳もあるけど」
「あ、そっちがいい」
こんな時によく飲めるね、と少し引かれたが、昔と変わらないパッケージのコーヒー牛乳を渡してくれた。
「用意してくれたの?」
「さっき買って、冷やしといた」
七海ちゃんの話が本当ならば、冷蔵庫にイチゴミルクは入っていないはずだが、ストックがずらりと並んでいるのが、先ほどチラッと見えた。
「そっちも好みは変わってないね」
「まーね」
現実と人から聞いた話のどちらを信用するかは問題ではない。
どちらにせよ、昔と変わらずパックをついて、乾杯できている。
それだけで、そんなややこしいことを考えなくてもいいだろう。
「今日泊まっていい?」
「そのつもりだったけど」
「一応聞こうと思って」
「えっ、常識が身についてる…!?」
「おい、こら」
一度も使われていないのではないかと思うほど、きれいなリビングテーブルに向かい合って座り、持っていたカスクートで夜食。
五条にも好評のよう。
「乙骨君はどうだった?」
「女は怖いよ、ほんと」
「…喧嘩売ってる?」
「別に~」
妙に含ませる言い方をするではないか。
気になったが、憤怒する恐れがあったので、やめておいた。
「話すことは沢山ある」
「そうだね」
「さっさと仕事絡みの話を終わらせちゃおうか」
「賛成」
ゴミを渡すと、五条がまとめてゴミ箱にシュート。
弧を描いて華麗に決まった。