第20章 昔話のハッピーエンド
「そんなことできるの?」
「うん」
「じゃあ、私の仕事が減らないのは何故?」
「そんなに万能じゃないの。時間かかるんだから」
時間がかかる上に永久的でない。
時間と労力が馬鹿みたいに必要なのだ。
「のらりくらり暮らしてると思ってたけど、頑張ってたんだ」
「おい、私をなんだと…」
……♪
「そうだ、電話番号教えて」
「うん。後で」
立ち上がると、少し足元がふらついた。
この酒の度数…。
強いとは思ってたけれど、果たしてどのくらいなのか。
これは、聞かずに飲んだ私が悪いか。
「はい」
『さて、東京の街並みが消えるまで残りわずかとなりましたが、準備はいかがですかー?』
部屋の中にある時計を見ると、すでに夜の8時。
七海ちゃんと深く話過ぎたことと、硝子に酒を飲まされて時間感覚が鈍っていることが敗因だ。
『どこいんの?」
「硝子のとこ」
『おっけー』
電話をブッチっと切られ、くらくらする頭を押さえて再び着席。
「うー、やば。東京、消えるかも」
「…五条?」
「そう」
少し考えただけでその名前が出てくるあたり、流石私の親友だと思う。
「何したの」
「時間の流れを甘く見てた」
「それで、東京が消えると?」
「まあ、色々あってさ」
「色々も何も、千夏が逃げたら東京消すよって言っただけ」
硝子の視線が私の頭上に移動した。
シャンプーと何かが混ざった、いい匂いがする。
「ここ、関係者以外立ち入り禁止」
「一番関係ない人がいるように見えるんだけど」
「千夏は死人だから」
「なるほどー。死人とティーパーティーってわけ」
肩に手を置かれ、顔を覗き込まれた。
「酔ってる?」
「少し」
実を言うと、結構キている。
さっき立ち上がったときに酔いを自覚したことで、本格的に酔いが回り始めた。