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【呪術廻戦】infinity

第19章 10年の後悔と1時間の奇跡


*****


久しぶりにあのパンを食べたくなり、パン屋に言ったものの、求めていた商品は完売。

八乙女さんも見失い、パンも買えない。

探し求めたものは何一つ手に入らなかった。





「ち、なつさん…」





しかし、彼女が今腕の中にいる。

たまたまあちらが転んだからこのような状況になったわけであり、まさに運が良かった。



「お知り合いでした~?」

「…まあ」

「すごい偶然ですね!」



八乙女さんが姿勢を直すのを確認してから、手を放す。



「…」「…」

「…じゃ、じゃあ、私は仕事に戻りますね!ごゆっくり!」



大きな紙袋にはパンが入っているのだろう。

大事そうに抱きかかえ、じっとしている。



「…移動しましょうか」

「車?」

「近くに止めてますが、他が良ければそれで」

「OK。私が運転するよ」

「死に急いでないので、遠慮願います」

「ひど。まあ、免許持ってないんだけどね」



この適当さ。

懐かしい。

彼女の荷物を持ち、ドアを開けて待つ。

店の外に出ると、彼女はフードを被り、サングラスをかけた。

元からマスクを身に着けていたため、まさに不審者のよう。

けれど、本人はいたって真剣に変装しているようだったので、何も言わないでおいた。



「おっ。ドア開けてくれてサンキュー。紳士じゃん」

「普通ですよ」

「そう思ってるのが、イケメンすぎ。おいしょっと。しばらく車ん中で話そうよ」

「分かりました」



八乙女さんは座席を倒し、大きく伸びをした。

変装は解かないのかと聞くと、どこで誰が見てるか分かったものではないと言われた。

およそ十年前の、八乙女さんが消えなければならなくなった出来事は知っているが、いまだに彼女の命が危うい状況にあるとは。

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