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【呪術廻戦】infinity

第19章 10年の後悔と1時間の奇跡


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人は死ぬとき、何を考えているんだろうか。

来る時をして死ぬならば、それなりの覚悟ができているかもしれない。

けれど、未来ある人間に突然の死が降り掛かった場合、自分の死を受け入れることができるだろうか。

不特定多数の、自分とは全く関係ない人を救う代わりに、自分の命を差し出さないといけない場合。

その死を仕方のないものだと思えるのだろうか。



『あとは頼むよ、七海』



不条理な死を受け入れたとして、最後の力を振り絞ってまで笑おうと思えるのだろうか。




人が死ぬことは分かっていた。

テレビや新聞が、毎日誰かの死を報道してくれているから。

知り合いの死に立ち会ったのも、初めてではなかった。

祖父母が幸せそうに天に召されていくのを見たことがある。




けれど、こんなにも人は簡単に死ぬのか。

こんなにもあっさりと。

ドキュメンタリーでよくある、治療で一命をとりとめたというのは、限りなく少数派であり、実際は治療なんていう猶予を与えられず死んでいく。

寒くないのに、手が震えた。



『やっほ。どうした~?』



不思議なことに、この時の自分はこの事実を伝えるために八乙女さんを選んだ。

彼女のことを特別信頼していたわけではないし、連絡帳の上部に名があったわけではない。



「八乙女、さん」

『…何があった』



それに、彼女の行動は癇に障る。

できれば、あまり関わらないでおきたかった。

けれど、なぜか一番に連絡を取ったのは、彼女だった。



「灰原が…死にました」



自分で言葉にすると、現実感が増す。

もう妄想上の出来事だったと、言い訳をして逃げることはできない。



『そう。後どのくらいで着く?』

「20分くらいです」

『分かった』



自分は彼女からのいたわりの言葉を待っていたのだろうか。

私は彼女に何を期待したのだろうか。



電話を切られた瞬間、絶望感が一気に押し寄せてきた。

そして、枯れてしまったと思っていた涙が溢れた。


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