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【呪術廻戦】infinity

第19章 10年の後悔と1時間の奇跡


*****


(おし、決めた!)



焼きそばパンの包装紙を丸めて袋に突っ込んだ時、やっと方針を決めた。



今日、七海ちゃんに会うのはあきらめる。

この後、時間が決まっているイベントが待っている。

これから七海ちゃんを探して、会って話すのには、時間が足りない。

七海ちゃんとは積もる話があるから。



「さて、と」



袋の中にはカスクートが残っている。

食べるか、食べまいか。



(食べよう!)



大事なイベントに今から向かうのは早すぎる。

カスクートを食べて、ここらを少し散歩して。

そうして時間をつぶそう。



(なにこれ、うまっ!)



初めて食べたが、ここまでおいしいものなのか。

サンドイッチは食パン派だったけれど、バゲットの良さに気が付いた。

これは是非、みんなに食べてもらいたい。



買った時、まだ数個カスクートが置かれていたはずだ。

五条と硝子、先生と…、あいつにも買ってみようか。



「いらっしゃ…あれー?」

「カスクートがおいしくって。追加購入に来ちゃった」

「えー!嬉しいですー!」



先ほどと同じ店員さんが、二度目の来店でも笑顔で挨拶してくれた。

お盆にカスクートを5個乗せた。



「うわっ。カスクート、売り切れちゃいました」

「完売に協力!」

「ありがとうございます~」



先ほどと同じ袋にカスクートが詰められていく。

完売に協力したお礼と称して、私のお昼ごはんのゴミを引き取ってくれた。

なんて優しい人なんだろう。



「いいなー。私もパン屋で働きたーい」

「ふふ。楽しいですよ~」



ポイントカードを作ってもらい、先ほどよりワンサイズ大きい紙袋を受け取った。



「また来る」

「はーい、待って…あっ!お久しぶりです~」



店員さんの視線が私から外れ、来店されたお客さんに移った。



「ああ…」



待て。

この声は。

この雰囲気は。



「残念ながら、カスクートは売り切れちゃったんですよ~」



急いで振り返ると、思ったよりも近くに立っていて、思わず体が仰け反る。

パンを守るために体を捻ると、バランスが崩れてしまい、足が絡まる。



「そうn…!?」



倒れかけた体を、来店されたお客さんに支えてもらった。

あの、まじめな彼に―――――
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