第19章 10年の後悔と1時間の奇跡
「だーかーら、七海ちゃんを出してよ。七海けん…なんちゃらって人!」
「お静かに…!ですから、個人的な要件は…」
こんなラフな格好できたからだろうか。
少し大きな声を出しすぎただろうか。
警備員さんに捕まって、ビルを追い出された。
警察を呼ばれなかったことが、不幸中の幸いだろうか。
七海ちゃんの所在はここで働いていることしか分かっていない。
今はコンブがいないから、調べることもできないし…。
「いらっしゃいませー」
とりあえず、私自身も昼休憩をとって計画を練り直そう。
近くにあったパン屋に身を寄せ、できるだけガッツリとしたおかずパンを購入。
「コロッケパンと、焼きそばパンでよろしいですかー?」
「うーん。後何か一つ食べたいんですけど、お勧めとかありますか?」
菓子パンでなければ、何でもいい。
今は甘いものは食べたくない。
「それでしたら、カスクートとかいかがです?」
「何ですか、それ」
「簡単に言うと、バゲットを使ったサンドイッチです!軽く食べれるので、重くないとおもいますよ~」
カスクート。
初めて聞く名前だった。
やはり、東京は食べ物の名前までおしゃれだ。
「常連さんのお気に入りでもあるので、味は間違いなし!」
「…うん。じゃあこれも買う」
「ありがとうございまーす」
笑顔の素敵な店員さんのおかげで、気持ちよく買い物ができた。
改めてお礼を言ってから店を出て、早速コロッケパンから実食。
マスクを顎に下げて歩くのは、少し危険な気がするが、漏れ出る呪力をセーブすれば、大丈夫だと思いたい。
(それにしても、これからどうしようか)
コロッケのソースが濃い部分を残しつつ、周りを確実に食べていく。
焼きそばパンに手が伸びる前に方針を思いつきたいところだ。