第19章 10年の後悔と1時間の奇跡
次に会う予定の人で一応最後。
最後に話したのが喧嘩のように終わってしまったことが、ずっと心残りだった。
12時30分
そろそろいい時間だろう。
忙しく生活しているらしいから、お昼時に訪れるのが一番だろうと考えた。
予定通りの時刻に、東京の街を象徴する大きなビルの中へ、堂々と足を運んだ。
呪術師をやめていたことには驚いたが、彼らしいと思った。
誰よりもまじめで、適当に生きたいと思っていそうな彼らしい選択だ。
『ついてこないでください。もう、あなたの顔は見たくありません』
あの一言は一生忘れない。
あの一言を言った、彼の顔も一生忘れない。
でも、私は今でも自分が正しかったと思っている。
どんなに彼を怒らせても、彼に嫌われても、自分の取った行動は正しかったと思っている。
正しかったと思わなければならない。
私が私であるために、正しいと思ったことを貫かなければならない。
けれど、私はあの時彼を追いかけなかった。
なぜ?
その答えは今でも分かっていない。
分かりたくもなかった。