第18章 カゲロウ
*****
「なんなの、あの子。好きになれる気しないんですけど」
道端に落ちていたペットボトルを踏み潰す。
「愛想のない奴だったな」
夏油は踏み潰されたペットボトルを拾い、ごみ箱に投げ入れた。
あの後、千夏は私たちが話しかけてもそっけない返事をするばかりで、会話に入ってくることはなかった。
その上、トイレに行くと言って出ていったっきり、戻ってこなかった。
これには、先生も怒りを隠しきれていなかった。
その後、実習の手引きの説明を終え、私たちはコンビニに買い物に行き、今に至る。
「いや。私だって初対面のやつにこんなこと言いたくないよ?でも、もうちょっとかわいげがあっても良くない?」
「まあ。それはあっても困らない」
「くっそぅ。明日こそ、喋らせてやる」
そう意気込んだのは良かった。
けれど、次の日になると、千夏は再び来なくなった。
その次の日も。
流石に三日目になると理由を聞きたくなり、先生に確認してみた。
すると、今五条が連れてくるといったような返事が返ってきた。
五条と千夏は元からの知り合いだと、先生や本人から聞いていた。
だから、先生の返答に大した疑問は抱かなかった。