第18章 カゲロウ
本当はこのまま五条を拉致したいところだけれど、あちらにも都合はある。
そして、何よりこれ以上ここにいることが危険だ。
「これ、今の電話番号。ひと段落ついたら連絡して」
予め用意しておいたメモを渡して、フードの代わりに深めの帽子を被った。
「今度はもう少し長居できる場所で会おう」
その場で数回跳ねて、準備運動。
「どこ行くつもり?」
「ちょっとそこまで。いろいろと罪を重ねてきたからね。そろそろ謝らないと」
殴られてもいいように、念のため頬を事前に痛めつけておく。
「ゾンビだと思われて、解剖されないように」
「もしかして、死んだと思われてる?」
「今は半信半疑なんじゃない?それだけの時間が経ったし」
「生きてることくらい言っといてよ」
「僕もあいつも忙しいのー」
「はいはい。その辺も合わせて謝罪しておきますー」
そろそろ出発したいけれど、腕を掴まれたままだと動けない。
どうやら五条は、このまま私がいなくなると思っているようだ。
私が渡した電話番号も、嘘でないか実際に確認されるくらい。
今までの行いによって、私の信用度がどれだけ低くなったかが分かる。
「また待たされるの?」
「君、仕事あるでしょ。それも乙骨君のめでたき転校初日なんだから、サボるわけにも、ね」
乙骨君に笑いかけると、物凄い勢いで顔を背けられた。
嫌われてしまっただろうか。
「私だって今すぐ五条と…」
「じゃあ、ここは公平に。今度は千夏に待ってもらおう」
ピコンと、携帯が音を出した。
送られてきたのは、簡易的な住所。