第18章 カゲロウ
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(まあ、結局行くしかないんですけどねー)
東京の街並みはあんなにも変わっていたのに、ここは何も変わらない。
まるで、タイムスリップしたようだった。
どうやって敷地に入ろうか。
呪力を極限まで抑えても、反応されるだろうし。
けれど、呪力を抑えて進むしか方法がない。
頭のいい千春ならば、ほかの方法を思いついただろうか。
試しに腕を中に入れてみた。
反応はない。
足を一本。
反応なし…。
(は、入れてしまった)
もしかして、何のセキュリティもなかったのだろうか。
とにかく、高専に無事潜入完了。
ここまで来てしまえばこっちのもの。
乙骨君のものと思われる気配を、さっきから感じている。
後は移動するだけだった。
(うわっ、生だよ。生五条だよ)
劇的な再会を夢見てたものの、一足先に五条を見つけてしまった。
包帯のようなものを目に巻いて…あれが最新のオシャレ?
東京出身だけれど、長い間地方にいたおかげで、東京のファッションはよく分からない。
(本物だァ)
10年ぶりにみる五条のかっこよさは衰えていない。
早く抱きしめてもらいたい。
けれど、猛烈に帰りたがっている自分もいる。
妄想だけを頼りに生きてきた私にとって、リアルの会話の仕方を忘れてしまった。
昔の私がよかったと言われてしまったら、体が裂けるまである。
このまま五条に抱きつきたい私と、逃げたい私。
どっちが勝ったかとい言うと…。
結果からいうと、逃げたい私。
その証拠として、五条が消えた瞬間に乙骨君の元に移動して、彼を攫った。
今日の目的を早く済ませて、トンズラしようという計画だった。