第18章 カゲロウ
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変装をして東京を歩くのは初めてだった。
十年前に東京を出たときにはなかったビルに驚きを隠せない。
(うわー、めっちゃおいしそーなハンバーガー…)
しばらくアメリカにいた影響もあり、ジャンクフード向きの舌になってしまった。
しばらくすれば治るだろうけれど、当分はジャンクフードだらけの生活になりそうだった。
今日の目的は、ある男の子を見に行くこと。
数日前にもらった連絡によると、男の子は高専にいるようだ。
私の命が狙われないか心配なので、男の子が敷地を出たところを捕まえる作戦。
(うまぁ…!)
今はそのための栄養補給。
しっかり食べておかないと、いつ何があるか分かったものではない。
もうすぐ12月だというのに、外は全く快適な気温ではない。
私の所持品の中には、刀が二本と小刀が一丁。
外見はスポーツ道具が入っているように見せているが、何かあって中身を見せろと言われたら困る。
身分証明書はおろか、死んだことになっているのだから。
偽装の身分証明書なら数種類あるけど、そのような凝った変装していないから顔写真が別人。
流石にそれでは切り抜けられないだろう。
ハンバーガーも食べ終わり、目的を再認識。
男の子の予定は分かっている。
仕入れ元は内緒。
私にだって、怖いものはある。
男の子の名前は乙骨憂太。
彼は今日、高専に入学する。
(待てよ。そしたら、結局私も高専に行かないとダメってことじゃん)
入学するのだったら、歓迎パーティーを行うかもしれない。
そうなれば、彼は高専を離れない。
今日中に彼を見に行くという目標を達成するには、私が動かなければならない。
高専に行くとなると、自分の存在がばれてしまう。
いや、すでに数人にはバレているとは思うが、決定的なものになってしまう。