第17章 バースデーカード
そんなある日のこと。
僕宛の荷物が届いた。
その荷物を渡してきたのは、僕が殺した男の息子。
その男が残した呪いに従うまま、その息子…伏黒恵と出会った。
『怪しいんで、開けない方がいいと思いますよ』
受け取ったのは、片手で抱えられるほどのダンボールだった。
差出人は田辺ゴン太。
聞いたことがない。
『誰から貰ったの?』
『冥冥さんです』
『…恵って冥さんのこと知ってたっけ?』
恵はばつ悪そうに首をかいた。
こんな分かりやすい反応をするなんて。
…念の為確認しておこう。
「あ、もしもし。冥さん?」
『…』
「ひとつ聞きたいんだけど、冥さんのことを”冥冥さん”って呼ぶ人、誰かいたっけ」
『…私は1人しか知らないね』
不機嫌そうに答えると、冥さんは電話を切った。
確認が取れたところで、ダンボールを開ける。
この箱は安全だ。
中に入っていたのは、まだ新しいシロツメクサの冠と手紙。
手紙の封を開けると、中に入っていたのはメッセージカード。
青色のボールペンで、一言だけ。
『Happy Birthday to new me』
ということは、つまり。
「やっと…」
俺は急いで『Q』に電話をかけた。
やはり繋がらない。
しかし、メールを送れることは以前試してある。
今、呪術高専ではある問題を抱えている。
その協力を求める内容を送った。
シロツメクサの冠は、待ち合わせの象徴だった。
最初のころは、家の門の前に冠が置かれていれば、すでに千夏が家の中に忍び込んでいるということで。
こっぴどく怒られてからは、冠は千夏が遊ぶ準備ができたことを示すようになった。
俺が来るのを待っている、というメッセージとなった。
そんなシロツメクサの冠が届いたということは、千夏側が俺を受け入れる準備ができたのだろう。
新たな自分の誕生を馬鹿みたいに祝って。
本当に自分勝手な奴だ。
けれど、そんな自分勝手な奴を何年も待っていたことは事実だ。
どうやら俺は本当に女の趣味が悪いらしい。