第17章 バースデーカード
「君の誠意に向き合ったわけじゃない。彼女に借りを作りたいだけ」
冥さんはコーヒーカップを端に寄せた。
「じゃあ…」
「ああ。八乙女千夏は生きてるよ」
冥さんが見せてくれた携帯の画面には、『Q』と書かれたアカウントが写しだされていた。
そこに表示された携帯の番号をメモした。
「今度、ちゃんとお返しするから」
「楽しみにしてるよ」
少し多めのお金をテーブルに置き、店員に会釈をして店を出た。
路地に少し入り、静かな場所に移動した。
メモした番号を連絡帳に登録し、一度落ちつく。
深呼吸をして番号をタッチした。
コール音が鳴る。
自然と足が動き、落ち着きがなくなる。
『電話ありがとー!』
ハイテンションのアニメ声が聞こえてきた。
『ここは祓い屋だよ!番号は間違えてないかな?』
冥さん。
もしかして騙した?
『おーい、聞こえてる?』
千夏の声が変わった可能性は0ではないが…。
『あと3秒以内に返答がないと、切っちゃいまーす』
「え、あ。はい」
これは録音音声ではなかったのか。
どうやら向こう側にいるのは、人間だったみたいだ。
『今日はどんな要件かな?』
「八乙女千夏と代わってほしい」
俺がそう言うと、向こうからブザー音が聞こえた。