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【呪術廻戦】infinity

第17章 バースデーカード


千夏の死を聞いて、俺たちは信じなかった。

彼女の頑固さ、粘り強さを知っていたから。

そうなるとおかしなことが出てくる。


なぜ嘘の記録をでっち上げなければならなかったのか。

なぜそんな面倒なことをしたのか。


何年考えても理由は分からなかった。

仮説だけが増えていった。


そんな中で、任務先であるものを見つけた。

見覚えのある模様が描かれたお札だった。

千夏が作る札には、特有の目印がついている。


それを見つけた瞬間、安堵した。

やはり、千夏は生きていたのだ。


何を目的にその地を訪れ、お札を貼ったのかは分からないが、とにかく千夏は生きていた。

それだけで十分だった。



そんな出来事の直後、色々なことがつながった。

その中で、冥さんの立場に注目したのは必然的なことだった。

偵察に向いている術式を持つ冥さんが、千夏の居場所を知る段階で駆り出されないわけがない。

実際に、秘密裏に調べてみると、冥さんはその期間に数日間の偵察を依頼されていた。



しかし、千夏が発見されたのは偵察の一か月後。

いくら何でも、冥さんと千夏の発見を結び付けるのは厳しい。

となると、冥さんが無能である可能性と、冥さんが隠し事をしている可能性が浮かんできた。



「冥さん。答えてくんない?」



ほぼ確実に冥さんは黒だ。



「全く、何を言っているか、分からないね」



喰えない人だ。

敵に回すと厄介であることは、すでに知っている。



「連絡先とか知ってんじゃないの?」

「彼女は死んだよ」

「死んでない」

「記録を持ってきてあげようか」



このまま平行線だと、単なる時間の無駄だ。

手法を変えるか、念のため用意してきた金をちらつかせるか…。



「冥さん」

「…その笑顔は嫌いだよ」

「頼むよ。千夏に会いたいんだ」



いつもヘラヘラしていて、真剣さを感じないと言われるが、今だけは本気の言葉だった。

心からの願いだった。

しかし、冥さんは相変わらずの表情で、効果は感じられなかった。

諦め半分でシフォンケーキのかけらを口に放り込んだ。
















「君たちは本当によく似ている」






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