第16章 始まりと終わり
「千春、大丈夫かな」
「寂しんぼ」
「だって、離れるの初めてだもん」
実際に離れているわけではないが。
細かいことはまた今度教えることにしよう。
人目につかないように動くのは意外と大変だ。
土地勘のない場所だとなおさらに。
「さっきから何でにやにやしてんの?」
「だって…五条くんに会えたんだもん」
子供のころと同じように顔を寄せられ、少し焦る。
「久しぶり♪」
「…久しぶり」
この緊迫した状態を分かっているのだろうか。
呑気な千夏に呆れて、笑いがでた。
もう一度千夏の顔を見ると、さっきまでは気持ち悪いほどにやにやしていたのに、神妙な顔に変わっていた。
「あの、さ」
「ん?」
「聞きたいことあるんだけど」
「今?」
何か不安なことでもあるのだろうか…なんて考えた俺がばかだった。
全てにおいて不安だろうに…ということではなく。
千夏の脳内はお花畑であることを忘れていた。
「私の、下着、見た?」
考えること数秒。
呆れを通り越して、イライラした。
けれど、ここで喧嘩している暇はない。
「見たっていうか…」
「やっぱり!」
「見えたんだよ」
「さいってー!」
「暴れんな!」
じたばた動かれると、非常に抱えづらい。
「普段はレースとかついてて、可愛いんだから!」
「どーせもいいわ!」
このまま落としてやろうか。
本気で落とすぞ、こら。
「少しは自分の身を考えろ…!」
「考えてるよ?」
あっけらかんとしている千夏を見て、こっちが不安になる。
「…不安じゃないのか?」
「うん。全く」
だって、と続ける千夏。
まさかの言葉が出た。
「五条くんがいるじゃん」
五条くんがいれば怖くないよ、と。
「お前、相変わらずバカだな」
「ひっど」