第16章 始まりと終わり
俺はばれないように笑った。
「おっけ。いくつか案を出すから、千夏が選んで」
監視カメラが付いているため、怪しいことはできない。
そのことを考慮して、いくつかの案を提示した。
「そんなこと、できるの?」
「千夏が本気を出せばね」
「千春でしょ」
「…ああ、千春が本気を出せばね」
千夏は単に名前を間違えたと思っているだろうが、俺は何も間違えていない。
そして、この話を聞いているであろう千春も、間違えていないことを分かっているだろう。
「ってことで、どのプランがいい?」
「誰も痛い思いしないやつがいい」
命をけがの一つや二つで守れるのならば、それ以上のことはないと思うが。
考えが甘ちゃんなのは、変わっていないようだ。
「どの方法をとっても、程度は違えど怪我はする」
「じゃあ、一番安全なのにする」
どれをとっても、最終的な結果は同じなんだよな…。
その中で一番危険がないのは…。
「脱出&バトルかな」
「名前からして一番危険じゃん!」
どのプランもここを脱出することが前提。
そのあとは千夏がどのようにして隠れるかという問題があって。
運が良くても、見つかるのは時間の問題だということは、俺も分かっている。
つまり、千夏が何を言おうと、脱出&バトル作戦に行きつく予定だった。
「どうせ捕まるなら、暴れてから捕まろうって話」
「捕まるなら、最初から大人しくしてた方が印象いいんじゃない?」
「俺たちはこれくらい暴れられますよって見せつけるのが大事」
「…それ、五条君が暴れたいだけじゃ?」
「違うって」
崩れた安定から生まれるのは混乱。
その混乱に乗じて逃げる。
こんなうまくいくとは思っていない。
この作戦の裏には、千夏のマックスパワーがどの程度のものかを知りたいという、個人的な欲があった。