第16章 始まりと終わり
そこには被害者の顔写真と、けがの程度が示されていた。
決して軽傷とは言えないもので、上から赤ペンで『呪い』と書かれていた。
簡易的に書かれているだけだったが、何を言いたいかは理解できる。
でも、気づかないふりをした。
「なんすか、これ」
「そのまんまだよ」
首を搔いてため息をつく。
「…この女の子が呪力で人を傷つけたと?」
「養子であり、出生が分からない。元無戸籍児らしい」
「ふーん。それで、俺が嘘をついていると」
「可能性として疑ってるだけだ。何か知っているなら、早いとこ言ってしまう方が良いぞ」
まあ、そうなるよな。
千夏と知り合いという時点で、俺の言葉を信用するとは思えない。
自分たちの都合のいい話は、余裕で信用するだろうけど。
「…ごめんなさい」
久しぶりに千夏が口を開けた。
「話す気になったか」
「…ごめんなさい」
千夏は謝り続けた。
次第におじいちゃんがイライラし始め、怒鳴り始めた。
それでも、千夏は同じことしか言わなかった。
「まあまあ。落ち着きなさいって。血圧上がりまくりだよ」
おじいちゃんと千夏の間に身を割り込ませた。
「とりあえずさ、一回二人で話させてくんない?それと、服も返してあげて」
「なぜ、お前が…」
「俺だって状況なんも分かってないんですよ。いっかい話させてくださいって。分かったことは教えますから」
半分ダメもとだったが、おじいちゃん悩みまくった末、二人で話すことを許可してくれた。
本当は結界を解いてほしかったが、手足の拘束解除までで止まってしまった。
もちろん、無条件で返してもらった。
「こっち見たらだめだよ…!」
「見ねーって」
「絶対だからね!」
今更…なんてことは言わなかった。
今喧嘩することは避けたい。
「…こっち、見ていいよ」
「ん」
振り向くと、街中でよく見かけるセーラー服を身に着けた千夏が、大人しく正座していた。
前髪を押さえて今更ながらの照れ隠し。
小さな赤い唇だけがこちらを見ていた。