第16章 始まりと終わり
「こんな野生児とお前は、どこでかかわりを持ったんだ」
「野生児ねぇ…」
老いぼれた頭でうまいこと言うなと思った一方で、加害者と二人にしてほしいと頼んでみた。
断られると思ったが、驚くほど簡単に了承をもらった。
ただし、目が覚めるまでという条件付きで。
目が覚めたら、上に設置してある監視カメラで確認して、部屋外にいる見張り役が事情聴取の続きを行うらしい。
これだけの結界が張られているのだから、俺が何かしようとしても無駄だ、という結界に対する信頼の元だろう。
千夏に会うのは何年ぶりだろうか。
短かった髪は、背中を覆うくらい伸びていた。
半ば強引にここに連れてこられたはずなのに、気持ちよさそうに寝ている。
どこでも寝られる特技は衰えていないようだ。
顔にかかっている髪を払ってあげようと思ったら、手がはじかれた。
どうやら、思っていたより、結界の強度が高いようだ。
千夏は一体何をしたんだろうか。
ここまでの強度の結界を張られるなんて、余程のことだ。
怨霊を隠しきれなくなったのか。
はたまた、自分の力を自覚して、悪だくみを始めたのか。
後者は怨霊が制すはずだし、そもそも怨霊が力に気づかないように気を付けていたはずだ。
こればかりは直接聞かないと、分かりそうになかった。
何はともあれ、千夏がここにいる…。
上に千夏の存在が認知されてしまった。
これ以上に悲しいことはない。
今までで一番心が悲鳴を上げているかもしれない。
「…起きた?」
ピックっと肩が動いたのを見逃さなかった。
直後、目がパチッと開き、茶色の瞳が露になった。
けれど、まだ虚ろではっきりと物が見えてない様子だった。
ギュッと目をつぶったかと思うと、次の瞬間にはパッと目が開き、時間が経つにつれて大きく開かれた。
「ごじょ…くん!!」
勢いよく起き上がろうとしたのだろう。
けれど、手足の自由が利かずに、バランスを崩すことになった。
俺が手を助けることはできないので、状況を呑み込めていない千夏を見ることしかできなかった。
そして、聞いていた通り、すぐに見張りの人が中に戻ってきた。