第16章 始まりと終わり
少し過去の話をしよう。
あの日ほど絶望した日はないという、忘れたくても忘れられない一日のことを。
2002年3月29日
俺の元に一報が届いた。
【〇×中学で女子生徒が重傷を負う。原因は不明】
そんな見出しから始まるものだった。
昼間の学校でこうした被害が出るなんて珍しいと、興味半分で続きを読んだ。
【加害者:八乙女千夏】
目を見張った。
知った名前だったからだ。
こんな紙切れに載る予定のなかった名前だったからだ。
続きには加害者の取り調べが行われていると書かれていた。
どこで行われているかは大体予想がつく。
シャツ一枚の上にジャケットを羽織り、マフラーを簡単にまいた。
少し肌寒かったけれど、部屋に戻るよりも早く行った方がいいと思い、手をこすり合わせながら建物を出た。
こういう時に自分の立場は便利だと思う。
御三家の一男坊。
すぐに加害者の元に行くことができた。
「女というものはおしとやかなものじゃないのかね」
移動中におじいちゃんがぼやいた。
この人が加害者をここまで連れてきたらしいのだが、加害者の抵抗が並大抵のものではなかったらしい。
見せられたおじいちゃんの腕には、生々しい歯型がくっきりと…。
思わず笑ってしまった。
「まさか、お前が来るとは思わなかったよ。知り合いか?」
「ええ、まあ」
こいつらに詳しいことを話すつもりはない。
けれど、建前上は無礼は取れないので、適当に返事をしておいた。
「この先にいるが…。まだ寝てると思うぞ」
「そっすか」
いくつかの扉を抜けると、厳重に決壊が張られた真ん中に加害者が倒れこんでいた。
手足を縛られた状態で。
しかも、下着のみを身に着けていた。
「こんなに厳重にします?服くらい着せましょーよ。年頃の女の子っすよ」
「お前は聞いてないかもしれないが、何が今回の傷害事件を起こしたか分かってないんだ。聞こうとしたら…この通り。これを見ても、年頃の女の子に見えるか?」
見張り役の人のおでこには青いあざが。
加害者に頭突きを食らったらしく、これが今のような措置をとる決定打となったとか。